#8 子どもと地球が笑う未来へ。自然の中で繋がる温かなコミュニティ【in 大阪】

お話を聞いた人

松岡照代(まつおか・てるよ)さん
松岡照代(まつおか・てるよ)さん



建築業界で働き結婚・出産。もともと農業との繋がりはなかったが、長女が重度アレルギーを患ったことをきっかけに自然農を学ぶ。2015年より、噛む素晴らしさを伝える「カム会」を主催。同年、自然体験ができるコミュニティーハウス「照乃ゐゑ」の運営を開始する。
2021年、「照乃ゐゑ」の仲間と「一般社団法人かみかみごはん」を設立し、カフェの建設を進めるためのクラウドファンディングや助産院の開設、イベントの開催など精力的に活動している。

活動を始めたきっかけは、どのようなことでしたか?

「かみかみごはん」を始めるまでにいろいろな活動を経て、今の形にたどり着いています。もともと、15年以上前に長女が重度アレルギーを患ったこときっかけに自然農を学び始めました。その後、アレルギーへの対応として様々なことを調べる中で「嚙むことの大切さ」に気付き、それを広める「カム会」という活動も並行して行っていました。

同時期に、自然農を実践する場を探していたところご縁あって現在の「照乃ゐゑ」がある土地(大阪府豊能郡能勢町)を取得することになり、自然農とカム会を合わせた活動を始め、この活動から「かみかみごはん」が生まれました。
 
「照乃ゐゑ」に通うようになり、地域を取り巻く高齢化・少子化・空き家問題などが目に付くようになりました。地域の担い手も高齢になってきており、前期高齢者が、多くの田んぼの担い手となり、後期高齢者を支えています。「照乃ゐゑ」に来る親子は、農村の空気のおいしさや、田畑の楽しさ、地球と子供を大切に思う同じ価値観の人と過ごす安心安全の心地よさを体感していますが、この地域に来るためには、雇用の問題、家族の理解の問題があると感じています。
 
さらにコロナの時代になり、より健康的な暮らしをする必要性を感じ、開放的な場所で人と繋がり、咀嚼を推進し、健康で幸せに過ごすお手伝いをしたくなったので、この地域で活動をさらに広げたいと思うようになりました。

松岡さんはお住まいのある大阪府池田市から活動のために「照乃ゐゑ」に通っておられて、能勢町はこれまでゆかりのなかった地域なのですよね。その中で地域の方にも広く応援してもらえる関係作りをされていることが素晴らしいです!

活動の中で梅干を作っています
どのような思いで今回の「令和3年度 女性の就農環境改善緊急対策事業」に応募されたのでしょうか?

能勢町の地域の方と関係を深める中で、「照乃ゐゑ」の活動の幅をさらに広げたいと思っていましたが、アイデアはありつつも金銭的な問題があり、実行できずにいました。そんな中、今回の補助事業に応募し採択されたことで、思い描いていた内容を一気に前に進めることができました。
補助事業ではカフェに付随する休憩スペース等の設備を導入しましたが、カフェ本体については別途クラウドファンディングを行い、資金を調達しました。

カフェのプレオープンカットの様子。オープンに向けて着々と準備を進めています
「令和3年度 女性の就農環境改善緊急対策事業」での取組について、もう少し詳しく聞かせていただけますか?

A. 当グループでは「環境整備」「グループ活動」との2部門に採択され、
環境整備では更衣室、休憩スペース、浴室の設置、
グループ活動では一般社団法人の設立、視察(4ヶ所)、試作品開発、視察先の女性が活躍する農業者グループとの打ち合わせ(1回)を行いました。

取り組みを実施してみての皆さんの反応、よかったこと、まだ課題だと感じることがあれば教えてください

さまざまな活動に取り組みましたが、特に千葉県にある「ブラウンズフィールド」に4名で視察に行ったことが良かったです。仲間と行くことでコミュニケーションが取りやすく、いろいろ相談したり、アイデアが出やすかったですし、その後の活動の広がりも生まれました。

「ブラウンズフィールド」の中島デコさんと一緒に食事のひとコマ

課題と感じることは、農業だけでは収益の確保が難しく、金銭的に運営が難しいことと、家庭の状況によって、活動やモチベーションが左右されることです。

グループでの活動の中で、女性が働きやすい(活動しやすい)よう工夫されていることがあれば教えてください。

大前提として、任意で行う活動だからこそ、一番に自分と我が子の笑顔を大切にする必要性を伝え、正直に何でも相談すること、自分や家庭を優先してもらうようにしています。
「子どもと地球が笑う」というコンセプトをまずは自分たちが体現してほしいと考えています。

大人も子どもも一緒に土壁づくりの様子

他には、子どもと一緒に農作業して泥だらけや汗をかいても大丈夫なように、浴室と更衣室を整備すること。深いコミュニケーションがとれるようにアイビーマッピングという手法でコミュニケーションを取ること。アレルギーの人でもみんなで一緒の食べ物が食べられる環境を用意すること、などを心がけています。

今後、グループ活動をどのようにしていきたいか、ビジョンがあれば教えてください。

「かみかみごはん」では、子どもと地球が笑う、農に繋がったご飯を中心に、咀嚼を推奨しておいしい楽しい環境を体験できる場を提供する活動をしています。
 
妊娠時より、その体験をしてほしいという想いから、7月7日には助産院「ubuyamomo」を開院しました。また、9月27日には地域でとれた野菜を使い、みんなが笑顔で食卓を囲めるようにアレルゲン除去をした自然食カフェをオープンします。将来的には、このような取り組みを他の不耕作地にも広げていけたらと思っています。
 
中長期的な取り組みとしては、農業体験のときに課題となる交通手段についてもアプローチする予定です。たとえば、阪急池田駅から、マイクロバスで農体験をしたい人(親子も含む)を送迎し、都市部に住んでいる人にも農に親しんでもらえるようにしたいと思っています。

山椒の実を採ってうれしそうな子

試行錯誤しながら活動を続ける中で、かみかみごはんの理念を以下のように定めています。

「私たちは自然に生かされている、自然の一部です。私たちは自然と人と繋がって、子どもと地球が笑う農をし、大地に繋がったごはんを中心に咀嚼を推奨して、おいしい楽しい、万物が大調和した世界をそうぞうします。」

(その他、活動宣言も細かく定めていますので、良かったらFacebookのリンクから覗いてみてくださいね!)

これから農業をキャリアの選択肢として選ばれる方へ、メッセージをお願いします!

まだまだ、私たちも駆け出したばかりです。運営という面では素人ですが、仲間とああだこうだと言いあい、共通の目標に向かって進むことは、とてもありがたく、幸せを感じながら活動をしています。
 
都会のビルの中ではなく、自然の中で活動できる農業という仕事は、私たちにとって心地良いものです。また、大切な時期の子どもたちとともに、子どもと地球が笑う活動ができることは気持ちがよく、実際に子どもが笑う姿やお母さんたちが笑う姿を見ると、やっていてよかったなと思います。まだまだ可能性は無限大。焦らず、ゆっくり、喜びながら、少しずつ、自然とともに、仲間とともに、作っていきます。ぜひ皆さんも自分らしい農との関わり方を見つけてもらえたら嬉しいです。

ミニコラムMini Column

小さなアクションの積み重ねで「ご縁をたぐり寄せる」松岡さんのパワー

「現在自然農を実践されていますが、松岡さんはもともと知識をお持ちだったのでしょうか?」

「いえ、長女が重度アレルギーだとわかるまでは、知識も関心もなかったんです。ですから三重や大阪、兵庫(淡路島)などさまざまな場所に自然農を学びに行きました。」

「その間お子さまはどうされていましたか?」

「三重と大阪の自然農の塾は子連れOKだったので、一緒に連れて行って、他の子どもたちと一緒に遊んでいました。淡路の時は子どもも大きくなっていたので1人で行きました。」

「お子さんが小さいから、といって諦めない姿勢が素敵ですね。」

「そのうち主人から、そろそろ実践に移さないのかと言われ、自然農ができる土地を探していたんですね。ちょうどまとまったお金を受け取る機会があり、窓口の方に土地の相談をしたら紹介していただいたのが今の「照乃ゐゑ」です。その他、もっと活動を大きくしたいなと思っていたら今回の補助金の情報を紹介してもらったり、視察で訪問したブラウンズフィールドさんとは個人的に仲良くなって、コラボイベントの開催や拠点として連携する仲になりました。」

「1つ1つは地道なアクションの積み重ねだと思いますが、こんなことをやりたい!という思いを積極的に発信して、自ら機会を掴みにいくところが素晴らしいですね。だからこそ、松岡さんが立ち上げられた活動がこれだけ大きなものになっているのだと感じました。」

私たちの「農場なんでも自慢」Proud of the farm

【1枚目】沢山の虫がいる自然農の田んぼ(タガメや蜘蛛、コオイムシもいます)【2枚目】子どもも大人もあるがまま過ごせる「照乃ゐゑ」のスペース

編集後記

お写真の雰囲気そのまま、穏やかで、かつ芯の強さを感じられる松岡さん。

長年温められてきたアイデアを次々と形にしてこられ、今後もやってみたいことがたくさんある、というお話を聞かせていただき、ワクワクしました。今後の活動の広がりをとても楽しみにしています!

基本情報

グループ名・事業者名
一般社団法人かみかみごはん
所在地
大阪府豊能郡能勢町
URL
https://www.facebook.com/kamikamigohan
https://instagram.com/kamikamigohan?igshid=YmMyMTA2M2Y=
活動概要・事業内容
2021年より「一般社団法人かみかみごはん」として助産師、保育士、セミナー講師、建築士、インテリアコーディネーターなど幅広い分野のメンバーが集い、自然の中で生き生きと子育てができる環境をつくることを目指し活動中。子育てサポートや、無農薬の米・野菜の生産等の事業を行う。
設立年
2021年秋(任意団体としては2015年~)
メンバー数・社員数
15人