#3 りんご栽培は女性にぴったり。味・技・加工すべて奥深いフルーツ栽培のおもしろさは、働いてこそ感じるもの! 【in 長野】

お話を聞いた人

山下絵里(やました・えり)さん
山下絵里(やました・えり)さん

山下フルーツ農園 代表取締役

長野県で、農薬を控えた方法50種類以上のりんご栽培をはじめ多様な事業を手掛ける「山下フルーツ農園」の代表。IT関連会社での勤務や渡仏経験を経てりんご農家の夫と結婚、現在は2児のママ。先代からのこだわりの栽培を受け継ぎつつ、規模拡大、カフェや農家民宿などの事業展開、女性が働きやすい環境づくりにも取り組む。

女性が働きやすい環境をつくろうと思ったきっかけは、どのようなことでしたか?

りんご栽培は女性向きの要素が多く、もっと活躍していただきたいと思うからです。
【女性向きだと感じる理由】
▷その1 力仕事が少なめで、細かい手先を使う作業、同じことを黙々と進める作業が多いからです。栽培工程の中で摘果(小さい実を落とす作業)が一番大変で、5~8月位までずっと続きます。
▷その2 年間通して人手は必要なのですが、絶対その日でないといけない作業が少なく、時間の融通が利きやすいからです。
▷その3 傷がないりんごを選んだり、見栄え良く梱包する作業が上手な方が多いと感じるからです。
その他軽量コンテナを導入していたり、収穫籠・コンテナの運搬などは機械で行うため力仕事はあまりなく、女性が働きやすい環境であることをもっと多くの方に知ってもらいたいですね。

「R3女性の農業活躍推進事業」ではどのような取り組みを実施していましたか?

男女別トイレと、屋外休憩スペースの整備を行いました。

女性が働きやすい環境について、具体的にどのような環境をつくられているのか教えてください。

勤務形態の面では、時短勤務・シフト制導入・急な休みへの柔軟な対応をしています。
空間としても、整理整頓などの徹底・農作物や休憩中のお菓子支給など、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
また、作業中は支障がない程度のおしゃべりや、小さな音量でBGMをかけるのもOKにしています。

トイレや休憩スペースなど、心地よく働く上で大切なところを整備されたのですね。時短勤務など柔軟な対応もしているというところ、とても働きやすそうです。お菓子の支給もちょっと羨ましいです!笑

どのような思いで現在のご自身の事業をすすめられているのか、きっかけや理念、思いなどを教えてください。

先代(夫の父)が65歳の時に夫婦で事業継承し、農園を法人化して代表となりました。
現在は商品加工、カフェ運営、農家民宿などの事業を展開しています。経営規模も従業員数も継承前より拡大しています。りんごや加工品は直接販売を行っているのでHPにもこだわり「自分たちのブランドをどんな風に見てもらいたいか」を意識して、親しみを持ってもらえるように作っています。
先代も50年位前から減農薬のりんご栽培、(農協を通さない)販路開拓など新しいことに取り組んできており、地域の方にも温かく見守ってもらっています。
カフェについては、果物を食べる人が減っているので、生産者が見える、気軽に来てもらえる農園になってほしいという思いで作りました。店内の床は畳になっているので赤ちゃんも寝転がったり、ハイハイしたりでき、同年代のママや年配の方も多く来てくださっています。

HP内のカフェのお写真がとっても素敵で、今すぐ食べにいきたいです!

今後、ご自身の農場や会社をどのようにしていきたいか、ビジョンがあれば教えてください。

もっと女性比率を上げたい、女性の活躍する現場でありたいと考えています。
自身の農場や会社・事業をきっかけに「食べ物の大切さや自然のありがたみ」を感じる人が増えるような事業展開をしていきたいです。地域全体で関わる方が増えていって、それぞれの持っているパワーを発揮していただきたいと思っています。

これから農業をキャリアの選択肢として選ばれる方へ、メッセージをお願いします!

農業は、自然の中で大地と太陽の恵みを感じられるとても魅力的な仕事です。
しかしながら、雨の中作業をしなければならなかったり、時には体力的にきついこともあるかもしれません。それでも、収穫を迎えたときの喜びは何にも代えがたいものがあります。
自分の好きなように好きなスタイルでできるのも農業の魅力です。あなたが目指したい姿になるために、ぜひ農業界に新しい風を吹き込んでください。
自分の目標や成し遂げたい事がある方は、今の世の中、農業をツールとしていろんなことを発信できるのでおもしろいと思います。農業をうまく足掛かりにして、やりたいことを実現してもらえたらと思います。

好きなスタイルで、って言葉が素敵ですね!

ミニコラムMini Column

山下さんが語る「フルーツのおもしろさ」

「HPにも「フルーツのおもしろさをもっと伝えたい」とありますが、具体的にどんなところがおもしろいですか?」

「まず、育てている人が個性豊かな方が多いですよね。野菜の農家さんとはまた違った雰囲気で、職人的なこだわりをお持ちの方が多いです。それに、食べ方も生で食べるか加工で食べるかで味わいや香りがまったく違ったり、同じ種類でも毎年でき上がってくるものが違う。一筋縄ではいかないところが魅力です。」

「山下フルーツ農園さんでは50種類以上のりんごを栽培されているんですよね、花粉が混じって別の種類のりんごができて困ったりしませんか?」

「りんごは違う種類を混ぜて植えたほうが、実がよく付くんです!りんごは接ぎ木で増えるので、どの枝に付くかで種類は決まっています。でもりんごの種はまったく違う種類になってるんですよ。逆に新しいりんごを作ろうと思ったら、その種を植えるんです。美味しいりんごかどうかわかるのは5年後、10年後ですけどね。」

「10年後にようやくわかるって、ロマンがありますね。フルーツのおもしろさが垣間見えた気がしました。」

 

私たちの「農場なんでも自慢」Proud of the farm

【1枚目】信州五岳(山)の見える風景。畑で聞こえる鳥のさえずり。【2枚目】何と言ってもりんごの花はきれいだし、りんごの実がなっている様子は圧巻。

編集後記

「非農家からの就農については、何も知らなかったのでフラットな気持ちだった」と語る山下さん。ハードルが高そうに思えることにもフットワーク軽く取り組まれているのが印象的でした。これからも、「食べ物の大切さや自然のありがたみ」を感じる人が増えるような事業展開をしていきたいと語る山下さんのこれからのご活躍をますます楽しみにしています!

基本情報

グループ名・事業者名
株式会社山下フルーツ農園
所在地
長野県上水内郡飯綱町大字倉井4276
URL
https://yamashita-fruit.com/
活動概要・事業内容
【主な事業】生産、販売、カフェ事業、農家民宿事業  【品目】りんご、水稲、桃、プルーン、プラム他
設立年
2013年7月
メンバー数・社員数
4名(正社員)、10名(パート)